現役の2サイクルエンジン搭載のジョグアプリオ。
最近中古市場でこの手のバイクをよく見かけます。
加速しようとするとエンジンが被ったように減速する症状で来店されました。
およそ30年前の原付スクーターです。
お客様自身もある程度エンジンの構造を把握しておられるようで、問診の結果不具合個所の特定はほぼ絞り込めました。
最近のFI(フューエルインジェクション)では電気式の高圧ポンプが必要ですが、この頃はガソリンタンクとキャブレターの高低差を利用した燃料コックが主流でした。
コックの開閉はインテーク側の負圧を利用しています。
しっかり整備されていない中古車では写真のような燃料の不純物が堆積してコックの開閉を妨げてることがあります。
今回このコックとキャブレターをオーバーホールしましたが、コックの方は金属部分に錆が見られたため、まともに動作できない状態です。
ダイヤフラムとスプリングもヘタっており再使用は不可能と判断し、新品と交換です。
次に一番懸念していたインテークマニホールド。
これが樹脂でできており、経年劣化しやすくひび割れから二次空気を吸ってしまうことがあります。
ところがこのバイクのは全く問題ありません、おそらくこれまでに交換されたことがあるのかもしれません。
実はエアクリーナーとキャブレターをつなぐパイプがおそらく他車のパーツが使われていたため、ハメ合いが悪くパッカリ口を開いていました。
すると吸気音が高くなるだけでなく、エアクリーナーを通らずに外気を直接エンジンに吸い込むことになります。
場合によっては砂や遺物を吸い込んでいる可能性もあるのでこのインテークバルブも視認で検査して掃除しておきます。
そんなこんなできれいになったキャブレターを装着してエンジンの不具合は解消しました。
30年物のバイク、何が起こってもおかしくないです。
中古車は少々高くても信頼あるショップで購入されることを望みます。
余談ですが、このタンクキャップは外気を取り込むように設計されています。
密閉されると思われがちですが、密閉されるとタンク内圧力が負圧になり燃料が落とせなくなります。
まれに古くなるとキャップ内が錆びたりオリが詰まったりしてそんな不具合を起こします。
最近のFIシステムだと、タンクキャップ内の構造が複雑になり、タンク内圧力を常に小加圧に保つように設計されています。
セルフGSをご利用される際には、このタンクキャップの取り扱いにもご注意願いたいです。
思う以上に精密部品です。